想定外の自然の妨害
2025年8月、フランスにある西欧最大のグラブリーヌ原子力発電所では、クラゲの大群が取水口フィルターを塞ぎ、六つの原子炉のうち四つが緊急停止に追い込まれました。発電所の運営会社であるEDFは事後に発表した声明の中で、このクラゲの群れを「大量で予測不能」と表現し、気候変動に伴う生物事象が重要インフラをいかに突発的に妨害しうるかを示しました。

日本では最近、クラゲが発電所の大規模な停止を招くような事例は発生していませんが、そのリスクは十分に認識されています。過去には柏崎刈羽原子力発電所など沿岸部の発電所でクラゲの流入が出力低下を引き起こした例があり、日本の規制当局は、地震や津波などの自然現象に加えて、クラゲや海藻類による「生物学的事象」も取水設備の運用上のリスクとして捉え、発電所の設計や安全審査の中で、適切な対策が講じられているかを確認しています。わずかな時間の停止であっても、産業界や地域社会、サプライチェーン全体に影響が波及する可能性があります。
エネルギーの安定供給が産業競争力と日常生活の基盤となっている日本において、こうした事象は、技術の進歩と海とともに生きる現実の間に存在する繊細なバランスを改めて浮き彫りにしています。
水中で見つけた“やさしい”解決策
解決の道は対立ではありません。共存です。その考え方を体現する技術の一つが「バブルカーテン」です。この仕組みは1940年代にオランダの技術者ヨハン・ファン・フェールが運河への塩水侵入を防ぐ目的で開発したもので、現在は新たな環境課題へと用途が広がっています。
バブルカーテンは、海底に設置した有孔パイプからオイルフリーの圧縮空気を連続的に放出することで機能します。上昇する気泡が水中に垂直の“壁”をつくり、物理的かつ音響的なバリアとしてクラゲを取水口からやさしくそらします。
化学物質も使用せず、生物に害を与えることもありません。水流のわずかな変化により、海洋生物を安全に別の方向へ導きながら、重要インフラの安定運転を支える仕組みです。これまでバブルカーテンは主に海洋騒音の低減や油膜拡散防止に用いられてきましたが、生物保護を目的とした応用は、自然と調和する新たな技術領域として注目されています。

クリーンな空気が海を守る
この静かな調和を支えるのがオイルフリーエアです。海洋環境を保護しながらバブルカーテンが機能するためには、供給される空気がクリーンで、汚染物質を含まないことが必須です。ここに、日立産機システムグループの技術が活かされています。
Sullair OFD1550のような可搬式オイルフリーコンプレッサーや、DSP/SDSシリーズに代表される高効率の電動式オイルフリー技術は、洋上・陸上の幅広い環境において安定したクリーンエアの供給を実現します。高い信頼性と環境配慮を両立するこれらのシステムは、エネルギー供給、海洋生態系、地域社会を守る技術の中核を担っています。
洋上風力発電所から沿岸部の原子力発電所に至るまで、コンプレッサーは静かに、そして確実に、持続可能な未来を支えるソリューションを支えています。
調和の未来へ
気候変動は、想定外のかたちで私たちに新たな課題を突きつけています。クラゲの大量発生は一見小さな問題のようでいて、産業と自然の関係を見直すべき大きなサインでもあります。
バブルカーテンは、設計の工夫と技術者の知恵、そして環境への敬意が共存できることを示す良い例ではないでしょうか。重要インフラを守りながら、海洋生物が生態系の中で健やかに生きられる環境を損なうこともありません。

日立産機システムは、技術が社会を支えながら、自然への敬意を忘れずに歩むべきだと考えています。 クリーンな圧縮空気で動くバブルカーテンのような技術を通じて、私たちは持続可能でレジリエントなエネルギー社会の実現に向け、一歩ずつ前進していきます。
参考文献

日立グローバルエアパワー
Head of Channel, Aftermarket & Marketing (EMEA & CIS)



