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製造業は、いま「イメージの壁」という課題に直面しています。あなたは「工場」という言葉を聞いた時、どんな風景を思い浮かべるでしょうか。薄暗く、油で汚れた作業場。レンチを手に列になって黙々と働く人々。暑い室内で額から滴り落ちる汗。「工場」と聞くと、今なおこのようなイメージを思い浮かべる人は少なくありません。しかし現場では、長年の努力と技術革新により、多くの工場が進化しています。

アメリカでは「Not your father’s Cadillac(親の時代のキャデラックとは違う)」というフレーズがあります。伝統的なものが進化し、今やまったく違う価値を持っているという意味で使われます。製造業も、まさにそのように認識をアップデートする必要があるのです。

製造現場では、オートメーション、シーケンシング、ERPシステム、品質管理やトレーサビリティのリアルタイムツールが稼働しており、さらに高度化が進んでいます。それでもなお、適切なスキルを持つ人財を採用することは簡単ではありません。仕事がないのではなく、「製造業のイメージ」が時代に追いついていないからです。次世代、特にZ世代に関心を持ってもらうには、彼らが「働きたい」と思える環境を提供する必要があります。

従業員が本当に求めていることは何か

賃金以外で従業員が仕事に期待していることとは何でしょうか?マッキンゼーの調査によると、報酬以外で製造業の職を選ぶ理由の上位3つは次の通りです:

・やりがいのある仕事
・柔軟な働き方
・信頼できる仲間

今回はその中から、いくつかに焦点をあて、製造業の認識を変えるヒントをご紹介します。

工場でもできる、柔軟な働き方

すべての製造業務をリモートワークにすることが叶うわけではありませんが、柔軟性を持たせることはできるはずです。

今年、私は東京に赴任し、日立産機システムの取締役社長 兼 CEOに就任しました。その前は、米国の日立グローバルエアパワーで取締役社長 兼 CEOを務めていました。

日立グローバルエアパワーでは当時、業界内における他社同様、人財の確保や定着が難しくなっていました。こういった状況から、変化を起こさなければならない、「これからの製造業」にふさわしい職場をつくる必要がある、と感じました。

そこで私たちは、インディアナ州ミシガンシティにある日立グローバルエアパワーの工場を近代化しました。世界水準の職場にふさわしい姿にするため、工場内の塗装や清掃を行い、冷却ジャケットを導入。快適性と効率性を向上させるための投資を行いました。カイゼン活動も実施し、業務プロセスの改善と継続的な進化に取り組みました。

Hitachi Global Air Powerのカイゼン活動「6S」

また、勤務シフトも見直し、柔軟な働き方ができるようにしました。現在では、10時間勤務×4日間のシフト制を導入し、ほとんどの従業員が3連休を取得しています。繁忙期には土曜日ではなく金曜日に残業を行うことで、週末の時間が確保できるようになりました。

日本では、オフィス勤務の従業員がフレックスタイム制や「リフレッシュ金曜日」(金曜日の午後に定例会議などを入れない試み)を活用しています。将来的には、日本の工場でも、米国での取り組みのように柔軟性を高めていけたらと考えています。柔軟な働き方は、生産性とモチベーションの両方を高め、私たちが従業員とその時間を大切にし、尊重していることを示します。

先手を打って次世代へアプローチ

将来当社で働きたい、と考えてくれるような未来の人財を確保するためには、早い段階から働きかける必要があります。米国(日立グローバルエアパワー)では、ミシガンシティ高校と連携し、「コンプレッサー・アカデミー」を開設しました。このプログラムは地方自治体、学校、他のコンプレッサー・真空機器メーカーと連携してつくられたものです。高校生のうちから実践的なトレーニングを行い、技術職に進むためのキャリアパスを提供しています。

このような取り組みにより、製造業が「未来志向の、尊敬される職業」であるという認識を育てることができます。

画像: 「コンプレッサー・アカデミー」授業の一幕

「コンプレッサー・アカデミー」授業の一幕

大学進学だけが正解じゃない―固定観念を問いただす

もちろん、製造業にはエンジニアやSTEM分野の専門職、大学卒業資格を持つ人財も必要です。しかし、すべての職種に4年制大学の学位が求められるわけではありません。現場では、熟練の職人、技術者、オペレーターも欠かせません。これらの職種は、大学卒ではなくても、デジタルスキルや批判的思考力、実践的な技術スキルが求められます。そして、その多くの職種は高収入でもあります。

労働者不足の課題を解決するには、こうしたキャリアに相応のリスペクトを持ち、「成功するためには大学進学が必須」という筋書きに疑問を投げかけることが必要です。
このようなメッセージは、学校や地域社会で早い段階から形成されはじめ、そして私たち自身がどう語るかも影響を与えます。

画像: 大学進学だけが正解じゃない―固定観念を問いただす

意義ある仕事を提供する

若い世代は、「自分の仕事が社会に貢献している」と実感できることを重視します。日立産機システムでは、私たちのコーポレートメッセージやパーパスにも、その思いが反映されています。

工場の現場から、設計、製品開発、プログラムマネジメントまで、すべての部門が連携し、食品・飲料、自動車、医薬品、半導体などの重要な産業を支える、高効率でデジタル連携可能な製品を日々生み出しています。

また、そうした企業文化の一環として、グローバルでCSR活動にも力を入れており、住居建設や河川清掃、植樹、ビーチクリーン活動など、従業員が社会に貢献する機会も提供しています。

画像: CSR活動の一環として、近隣の河川敷で行われた従業員による清掃活動の様子

CSR活動の一環として、近隣の河川敷で行われた従業員による清掃活動の様子

日々の行動と長期的な戦略の両方において、私たちはパーパス・ドリブンであり続けます。

製造業は、過去に縛られ時が止まっている産業ではありません。むしろ、未来をつくっている産業です。大きく変わった製造業の現場に、私たちの認識が追いつくときです。

画像: 進化する工場と、更新されないイメージ

ジョン・ランドール
株式会社 日立産機システム 取締役社長 兼 CEO
前 日立グローバルエアパワー President & CEO

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