環境対応の一歩を踏み出すために
二酸化炭素排出は気候変動の主要因とされ、企業は法規制や社会的要請の両面から対応に迫られています。たとえばEUの「産業排出指令(IED)」は、利用可能な最良の技術(BAT)を活用して汚染を最小限に抑えることを産業部門に要請しています。IEDでは、二酸化炭素などの排出上限を厳格に設定しており、違反すると罰金や営業制限の対象となります。しかし、効率化には大規模な設備更新が必要である、というイメージは根強く、コストや工数の問題から一歩を踏み出せない企業も少なくありません。
効率化に向けたアプローチ
産業部門による環境負荷を抑えつつ、事業運営の最適化を行うにはどうしたらよいか、この課題に対応するため、日立グローバルエアパワー(蘇州)では、中国版Hitachi Connected Service(以下Hitachi Connected Service)をソリューションとして提供しています。

Hitachi Connected Service運用画面イメージ
一般的に工場の電力の25%は空気圧縮機で消費されていると言われています 。Hitachi Connected Serviceは、空気圧縮機の稼働状況をリアルタイム監視、中央管理、リモートアクセスにより、高い精度で管理することが可能です。電力、稼働時間、負荷率などの状態をリアルタイムでモニタリングし、稼働状況を戦略的に最適化することで、システムを全面的に入れ替えることなく無駄なエネルギー消費の削減につなげることができます。このようなIoTソリューションにより、既存設備を活かしながら運用効率向上と環境責任の両立を実現させることが期待できるのです。
GSMA(Global System for Mobile Association)によれば、このようなIoTを活用したスマート製造プロセスを導入することで、2030年までにネットゼロ目標達成に必要な炭素削減の16%に相当する約1.4ギガトンのCO₂を削減が可能とされています。これらの数値は単なる指標ではなく、産業部門がより持続可能な事業運営に向けた意思決定を行う上での実用的かつ有意義な指標となります。Hitachi Connected Serviceも、詳細な稼働データ分析によるエネルギー使用と排出の最適化を通じて、こうした削減に貢献しています。
企業と環境への影響
Hitachi Connected Serviceは、安全性を重視したユーザーフレンドリーなインターフェースを備え、リスクや事故の低減を実現します。また、さまざまなブランドとの互換性があるため、既存設備の最適化をスムーズに行うことができます。リアルタイムデータバックアップやオンラインアップグレードにより生産を中断させることなく、継続的な改善が可能です。このようなIoTソリューションの導入により、規制基準に対応するだけでなく、ビジネスレジリエンス(回復力)と競争優位性の確保というメリットを得ることが期待できるのです。

Hitachi Connected Service画面イメージ
持続可能な未来にむけて
サステナビリティ目標の達成は、一社だけで実現できるものではありません。革新的な技術と共創があってこそ、持続可能な社会の実現に近づくことができるのです。Hitachi Connected ServiceのようなIoTツールを活用することで、規制基準の達成に貢献するだけではなく、事業運営を超えたポジティブな影響を得ることができます。より多くの企業がスマートソリューションを採用することで、その影響は積み重なり、産業の効率性と環境責任が相互に強化される明るい未来へとつながっていきます。
よりスマートでグリーンな事業運営へ
IoTを活用した運用最適化で効率性を高め、炭素排出量の削減に貢献することで、産業部門はより意義のある変化を推進できます。持続可能な産業運用の未来はすぐそこにあります。次のステップを共に踏み出しましょう。
- International Energy Agency (IEA). "Industrial energy intensity and pathways to net-zero.":https://www.wri.org/insights/shifts-to-decarbonize-industry
- "Directive 2010/75/EC on industrial emissions" EEA.:https://www.eea.europa.eu/policy-documents/directive-2010-75-ec-on
- "Revised Industrial Emissions Directive (IED)":https://ec.europa.eu/newsroom/env/items/846684/
- Mobile Enabling Net Zero Manufacturing | GSMA:https://www.gsma.com/solutions-and-impact/connectivity-for-good/external-affairs/manufacturing-sector/
<用語解説>
エネルギー強度:
最終エネルギー消費量または一次エネルギー供給量を、生産額や国内総生産(GDP)で割った値。単位あたりのエネルギー効率を示す指標であり、数値が小さいほど効率が高いことを意味します。
一次エネルギー:
自然界から直接得られる、変換や加工を施していないエネルギー資源のこと。石油、石炭、天然ガス、水力、風力、太陽光などが該当します。

日立グローバルエアパワー(蘇州)
Electrical Engineering Manager